12/9の千葉市は朝から冷え込みが厳しくて、ライブ会場の盛岡へ向かうため外へ出たのはまだ仄暗い時間帯。立っているだけでスニーカーの先から冷気が忍び寄ってくるような気温に瞠目しつつ、空いている休日朝の総武線から東京駅で「はやて」に乗り換えてホッと一息、あとは現地でゆっくり観光でもしながらライブに備えて――そんなことを考えながら新幹線のチケットに目を落とす。
東京-盛岡の所要時間は3時間。それだけかかるってことは停車駅が多いんだろうなと思ったのに、車内アナウンスによると大宮からは一気に仙台まで行くという。
えっじゃあ純粋に距離がそんなにあるの?興味本位で距離を調べてみたら、東京-新潟間は東京-名古屋、東京-仙台と同じくらい、そして東京-盛岡は東京-大阪と同じくらいだという。ひえー。東日本の生まれだから、脳内日本地図は上下に縮んで左右に伸びてるんだなと実感。
しかし東北新幹線って、住宅地でもターミナルでもなく、農道が走る田園風景にいきなり駅が現れるもんだからびっくりする。地域住民の足として普段使いされてるのかなあとか。下手すると周りにはビジネスホテルはおろかコンビニさえなさそうなんだもの。
水沢江刺とかいう水で沢で江で刺身ってどう考えても美味しそうな駅を通り過ぎて、ぱんぱかぱーん!わーいわーい!な北上駅を抜けてようやく盛岡着。ここまでも十分に時間がかかったけど、秋田は盛岡乗り換えで更に先らしい……てっきり秋田-東京間の秋田新幹線ってのがあると思ってた。距離にして東京-相生間とほぼ同じで、もう岡山の手前だよ。冷静に日本地図を眺めると本当に東北は遠くって、割と節目節目で帰省してる印象の同級生は大変な思いをしてたんだなあと。

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10:11に電車から一歩降りるとホームの気温が、空気が既に違う。それは豪雪地帯の上越で真冬に感じる寒さと同質のもの。防寒対策だけはしっかりしてきてよかった……と思えたのも駅を出てしばらく歩くまでで、刺すような冷気がまたたく間に指先から痛覚を残して感覚を奪っていき、手袋をしていてもポケットから手を出せない。
新潟でも似たような感覚は知ってたけど、それは吹雪で付着した雪が手袋越しに温度を奪って水になりそれが外気で凍りつくというもので、盛岡の「晴れているのに異常に寒い」というのは未体験ゾーン。路面は凍結してるのに、こちらの装備はスニーカー。雪でも積もってればそこいて歩けばスリップを免れるんだけど、吹き下ろすからっ風がパウダースノーを掃き散らしてしまう。それでも地元民はママチャリで下り坂を走り抜けるんだから凄いね東北ネイティブ。

盛岡八幡宮に参拝したり旧・岩手銀行を探訪したり「盛岡 観光」でggると出てくる系の歴史ある蕎麦屋さんで天ざるを頂いたりしたけど、その辺は脇の話なのでパス。

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会場の岩手県民会館に到着したのは開始20分前だったものの、グッズの列は5分程度で捌けてて素晴らしい。WUGの物販てアイテムごとに7種類あるから時間かかりそうなものなんだけどね。まあ並んでる総人数が……ってのは触れちゃいけない。

今回のパンフはインタビューが薄くて不満。個人紹介の後にイベントやCDの発売日が纏められてて、資料的な価値はあるかもしれないけど、私はメンバーの写真と言葉を見たい読みたいの。畢竟、記録はggれば出てくるしね。
ただ、身に纏っている衣装は黒ベースで銀の装飾が高級感あるしストレートにカッコよくていい……吉能は凛々しいしまゆしぃは美人だし美海七海は顔ちっちゃくていつも以上にアイドル然として。これはブロマイド買えばよかった気がしてくるよ。ただ、ライブ会場で自分の引きを信じるより駿河屋で買った方が安いんだよなあ。

あと買ったものはタオル。今回は宗旨変えして水色を。するとどうだろう、見えてくる景色が違うの。香耶推しの時は緑色を身に付けてる人間を見ては、こいつら全員殴り倒さなきゃ……という攻撃衝動に駆られ、その一方で自分はこの人たちほど香耶にカネと時間をかけたのか?真摯であったのか、という劣等感に押しつぶされそうになった。
けど今日は水色のみんながファミリー!お調子者ですぐいじけて、でも気配りが出来てWUGが大好きなリーダーをみんなで暖かく見守ろう、応援していこう!って思える。コペルニクスもびっくりな同担拒否からの同担歓迎の原因は、内的なものじゃなく対象の性質に依るものかな。今でもうえしゃまのイベント行くとやっぱりこいつら全員以下略な気持ちになって心が痛むから。ファンションサイコとかでなく、好きな人が死んでくれたらそれはそれで嬉しい。未来に向かう無限の輝きに目を細めるのも、断絶した過去を偲んで目を瞑るのも別軸で等価値の満足があると思うよ。

この日は寒かったからパーカーの購入も検討したけど、「ゆったり着られるフリーサイズ」が罠なのでスルー。身につけるもののサイズがSになってから割と買い物で困ることも増えてきたけど、女の子で言うところの「胸が大きいと可愛い下着がなくって〜」みたいなもんだよと自分を納得させる。ライブでも前が見えなくて不利になるし、上背がせめてもう10センチ欲しかった。それでも成人の平均とどっこいでしょ。

あ、冬場のライブでTシャツなんて着られねえよ問題は、長袖のアンダーシャツの上から着るという知慧を野良ワグナーから得たので解消した。次回から真似しよう。

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場内では「仲間を求めて」やら「風の憧憬」やらが流れてる。なんなのスタッフは昔のJRPG好きなの?と一瞬訝しく思ったけど、ツアーの副題が「FANTASIA」だからか。開幕の寸劇もファンタジックに語りかけるメルヘンなおとぎ話風で、優しい雰囲気のまま1曲目はスキノスキル。メンバーの指先から魔法のきらめきが、くるりと旋れば風のエフェクトがステージに降ろされたままの薄幕に投影されるというのは面白いけど、踊るメンバーが幕の向こうでぼんやりしちゃうから、この演出には非常に否定的。まあこれは2曲目への"溜め”だったんだけど。
消化不良感のあるままスキノスキルが終わると、チップチューンに乗って寸劇再開。

幕に映されるのはRPG風……というか、「それはマユが16歳になる誕生日のことであった。起きなさい、私の可愛いマユや」からはじまって、お城で王様に会って酒場で仲間を3人加えて。いいのかこれ?ってレベルのどこかで見たドットとBGM。旅の途中でシラキリュウから即死ダメージを食らったヨシノが棺桶に入ったり教会で生き返らせたり、やや冗長な感のある旅はラスボスの潜む洞穴へ。ここでヤマタノオロチ風の敵の登場とともにoutlander rhapsodyのイントロが流れると、ステージの2階部分には剣を携え背を向ける4人の姿が。そしてイントロがアップテンポになるところで振り向きざまに剣を一閃!一気に幕が落ち、プロジェクションマッピングで(詳しくないから違うかもしれないが)ステージ全体をのたうつヤマタノオロチ。歌唱メンバーの4人はヘッドセットを装着し、剣舞を思わせるダンスを披露する。
間奏では残りのメンバーも客席の通路に現れ「みんなのワグナーパワーを分けて!」と煽る煽る。客席のボルテージの昂まりと呼応するように持っていた剣がメンバーそれぞれのカラーに輝き出すと、落ちサビでステージに揃った7人は円陣を組んで剣を掲げ合わせ、ついに邪悪なドラゴンを打ち倒す!最後は再びステージに背を向け、7人でキメ。

正直、ここの演出は大いに盛り上がったし震えたし、なんならこの曲だけで4000円くらいの価値があった。オペラグラスでじっくり鑑賞するつもりだったのに、ついサイリウムを振りながら叫んでしまったね。7人はそのまま剣をマイクに持ち替え、ED感あふれるリトル・チャレンジャーへ。いやー強い導入3曲だった……。

以下は全体のセトリ。
1.スキノスキル
2.outlander rhapsody
3.リトルチャンレジャー
MC
4.運命の女神(knock out)
5.Jewelry Wonderland
リーディングライブ「WUG7姉妹」
6. Polaris
WUGからのメッセージ
7.イーハトーヴの風(旅立ちの時)
8.言の葉青葉
Wake Up, Girls! MEMORIES 2017, 2018
9.7 Girls War
10.タチアガレ!(16歳のアガペー)
MC
11.雫の冠
12.Beyond the Bottom

EN1.セブンティーン・クライシス
EN2.ハートライン
MC
EN3.少女交響曲

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MC明け恒例になってるI-1パートはKnock outが非常に扇情的。今までは愛ちゃんが気を吐くダンサブルな曲って認識だったけど、七海たちもいい。エロ可愛い。

リーディングライブはWUGが姉妹だったら?というもの。せっかくだからと年下を姉にして、実波お姉ちゃんにどんどん食べさせられる佳乃、菜々美に「お姉さま」呼びを強要される夏夜、未夕はダンスを真夢に教えようとするも真夢のほうが上手くてしょぼぼーん(まゆしぃのコサックダンスには驚いた)。そして藍里はみんなのお姉ちゃんだから変わらないね、というオチ。
昼は台本中心にキャラクターを演じ、夜はアドリブもどんどん入って中の人が出てきてるのは変化があって面白かった。愛理お姉ちゃん水泳のアニメ見よう?愛理お姉ちゃんはこっちでバレーのアニメ見るんだもん!とか思わず笑いが漏れる。

ただ、ここでPolarisやって一休みして地元の合唱団・イーハトーヴシンガーズを交えた名曲&言の葉青葉の合唱をしてまた一休みして……ってのは正直テンポ悪かった。その後が7GW、タチアガレ!(夜はアガペー)と続くのも、シナジー考えずにただパワーカードを連打してる感があってイマイチ。香耶が企画したイーハトーヴシンガーズによる歌唱や、香耶が抱える「これから」への想いを吐露するモノローグ、メンバー全員がワグナーへ感謝を伝えるビデオメッセージも意識高い感じが鼻についた。
感動させるべく構成されたプログラムに酔っている感じというか……夏にやったStart It Up!がホームパーティのような楽しいライブというコンセプトだったのに、幕間で東北ろっけん復興への願いを差し込んできたり、FINAL TOURだからなのか、東北と結びついたグループだからなのか、メンバーが真面目すぎるのか、焼肉の最中に「私達は動物のいのちをいただいているんです」と説法を聞かされた気分。
香耶が繰り返し言っていた「忘れられないライブにしたい」「ずっと残る思い出になってほしい」っていうのを、入れ替わりの激しい声優業界で爪痕を残したいという願いの発露と捉えるのは穿ち過ぎかもしれないけど、前向きに捉えればライブをただ消費されるだけのエンターテインメントとせずに、どこか固くて真面目なものにしてしまうのは立派なWUGの個性かもしれない。そして、そういう擦れてないところに純粋さを見出してしまうのがワグナーなのかもしれない。

ライブ終盤は雫の冠、BtB、少女交響曲と、まあ「FANTASIA」の副題からは予想通り。セブンティーン・クライシスではあぶれたもやごぼコンビがステージ2階で喧嘩してるフリが面白かったけども、全体を通じて曲数そのものが少なめだったからPartⅠとⅢの中継ぎっぽさは否めなかったかな。

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今回は、ハッとさせられるMCが耳から離れない。美佑がうっかり「岩手でライブするのはこれが最後だけど」って言ってしまって、一瞬場の空気が凍りついたのが。七海が「どうしても3月を意識しちゃうけど」、まゆしぃが「新しいコールも増えてるし私たちまだまだいける、もっとやれる!」ってフォローするも、みんなAfter WUGを意識せざるを得ないところに来てるんだなと。

そういう意味でも、香耶がどうしてもやりたかったというイーハトーヴシンガーズの「旅立ちの時」は、儚くも力強い歌声が、寒々しくどこまでも高い東北の冬空に溶けていくようで圧倒されたし、言の葉青葉の混声四部合唱はメロディーや歌詞の素晴らしさをあらためて噛みしめることができた。
言の葉青葉の落ちサビは会場全体で歌ったんだけど、「私は『頑張ってねと簡単に言えないよ』の歌詞を是非ワグナーさんに歌ってほしかった。お手紙や握手会でいつも『頑張ってね』と声をかけてくれるワグナーさんたちに、それでもいつも応援してくれるじゃん!ありがとう、と伝えたかった」という香耶はエモーショナルで、香耶推しは気絶したんじゃないの。

香耶がWUGから先に進むための禊みたいな独自色の強いライブだったけど、PartⅢの会場はメンバーゆかりの地域が多いし、こういうお当番回みたいな感じになるんだろうか。推しがメイン張りそうな会場には絶対に駆けつけたほうがいいと確信したね。

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ライブのあとは冷麺と焼き肉で一人乾杯。しかし、いい気分で信号の向こうのセブンイレブンへ駆け込んだらレジに並んでる途中で頭が痛くて視界が液晶掛けみたいになってすぐに目も開けてられなくなって、ああこれは気を失うなと思った次の瞬間にはレジに倒れ込んで店員に起こされてた。
這うように退店し、交差点に建つビルの入口階段に腰を掛けて息を整える。信号が3回ほど赤と青を繰り返す頃には頭もしっかりしてきたけど、寒さはまったく感じない。それなのになぜか震えが止まらない手で携帯電話を探す。無い。コンビニか?まっすぐ立ち上がれずに四つん這いの姿勢からゆっくりと腰を浮かせて先程のセブンへ。果たしてレジのそばに落ちていたiPhoneを無言で拾い上げ、辛くもホテルに戻ると、館内の暖かさにホッとしたのか再び眼の前が真っ暗になって。

という異郷の地で体調を崩しそうなアホをやらかしたものの、なんとか無事に帰ってこられました。年明けの熊本も楽しみですね。上手くいってドヤ顔でも失敗してガチ凹みでも、どう転んでも可愛い吉能を見守りたい。

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