評価:☆☆☆☆☆
人類の拡散と文明の曙、近世の興亡に至るイベントを、当時の気候という切り口から再評価する内容。
チャプター冒頭に要約が入り、小見出しで何年頃の話なのかを表示、評価軸も温暖だったか寒冷だったかという2軸評価でとにかく分かりやすい。

・かつて巨大な淡水湖であった黒海沿岸で農業がはじまったが、温暖化の影響でマルマラ海を超えて黒海に海水が流入し沿岸の農業が壊滅したことで各地に農民と農業技術が広まった。

だとか、
・温暖化で高緯度地域の氷床に積もった雪が融けだして融水湖を形成、じりじりと水位が上がって、あるとき堰を切ったように(文字通りだ)大量の真水が海へ流れ出ることで周囲の塩分濃度が低下=凍りやすい状態になった。海が凍ることで海流が妨げられ北大西洋ではメキシコ湾流が弱まって寒冷化が進んだ。

なんてメカニズムは目から鱗。日本ではその頃どうだったのかを文献から読み解いたり、バイキングのグリーンランド入植について「その頃は暖かかった」、その後の全滅は「それから寒くなった」と快刀乱麻。この辺はジャレド・ダイアモンドの「文明崩壊」でも読んだけど、一層分かりやすかった。

結びは、温暖化が叫ばれてるけど地球の歴史上「ちょっとずつ寒くなった」なんてことは皆無で、環境は「常に激変する」ものなんだ。しかも現在はパラメータが多すぎて未来予測なんて誰にも出来やしないよ、という感じ。無責任な人類への警告系じゃないのもポイントが高い。

難点はとにかく図やグラフが読みづらいこと。解像度が低くて数字がぼやけてたり棒グラフの色分けが白黒なのにグラデーションばっかりで何が何やらだったり時間軸を「AD◯◯(年)」にすりゃいいところを「◯◯年前」にしてるから直感的に分かりづらい上にグラフが→じゃなく←に向かってるのも違和感。

それでも十分に読む価値がある。なんか文庫も出てるみたいだから手元に置いておきたい。積んでる本を読み終わったらね……(漫画約130冊、新書・文庫・ハードカバー12冊)。

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